俺様富豪と甘く危険な恋
『多謝(ありがとう)』


(ありがとう……か、栞南を思うと不思議と相手をいたわる気持ちが出てくる)


蓮は花束とケーキを持ち、足早にエレベーターに向かい、ちょうど降りてきたエレベーターに乗り込むと、B2の駐車場で降りた。

エレベーターホールを出て5メートルほど先の車のそばにボディーガードとダニエルが立って待っているのが見えた。


(車の中に入っていればいいものを)


彼らに向かって歩き出すと、ダニエルとボディーガードの顔つきが変わった。


「後ろにっ!」


ダニエルの声に蓮はハッと俊敏に振り返る。

振り向きざまに腹部に焼けるような痛みが走った。手からバラの花束とケーキの箱が離れる。

蓮は焼けるように痛む脇腹に手をやると、血がべったりついた。


「くっ……」


すぐに身構えて襲った人物を見ると、おととい、栞南を襲ったリーだった。荒く息をつき、右手にナイフを持っている。


「レンさま!」

「大丈夫だ」


ボディーガードが蓮とリーの間に入る。

リーはナイフを持ちボディーガードに向かっていく。リーの攻撃を交わすボディーガードだが、屈強の身体つきと俊敏さは襲いかかる男に分がある。

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