俺様富豪と甘く危険な恋
「あ、昨日のケガは大丈夫そうね?」


刺されたことは誰にも話していないが、香港警察の上層部にも知り合いが多いソフィアには昨日のことが筒抜けだったようだ。


「ああ」


オフィスのドアまで来た蓮は立ち止まるとソフィアへ振り返り短い返事をする。


「あなたがやられるなんて、夢中にさせている誰かさんのせいなのね。会ってみたいわ」

「いずれ会わせる」

「楽しみにしているわ。じゃあお大事にね。あ、お見舞いのお花はマンションに届けてもらっているわ」


ソフィアは蓮の頬に唇を軽くあてて出て行った。

ソフィアの唇が頬に触れ、蓮は今朝のことを思い出した。


(キスを拒絶されるとは……)


それまでは甘い雰囲気が漂っていたと思うのは自分だけなのだろうか。

ため息をつきデスクの端に腰を軽く掛けると、電話の通話ボタンを押してダニエルに今から帰ると告げた。



昼食後、洗濯室から出てきた栞南はトニーが見事な花束を抱えてダイニングテーブルの上に置くのが目に入る。


「レンさま宛です」


ちょっとバツが悪い顔のトニーに栞南は小首を傾げる。

花束に近づくと、カードが挟まれていた。


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