俺様富豪と甘く危険な恋
しかし、駅に向かいながらラーメン屋へ行けばよかったと後悔した。

自宅が同じ方向の孝太郎がラーメン屋へ行かず、気づくと隣を歩いていたからだ。


「水野さん」

「な、なんですか？」


ずっと黙っていた孝太郎が口を開いて、栞南は身構えるようにして彼を見る。


「あのさ、そうやっていかにも彼氏が出来たオーラ出して、でも口ではいませんって言うのやめた方がいいよ。なんか見苦しい」


唐突になにを言うのかと、栞南は驚きすぎて絶句する。


「もしかして俺を見返してやりたいって思ってる？」

「なにを言ってるの？　見返してやりたいと思ったらどうなの？　自分勝手なことばかり言わないで！」

「だからさ、小細工して皆に彼氏が出来たオーラ出している雰囲気を出すなってことだよ。いないくせに」

「言ってる意味わかんないっ！」


立ち止まって最低な男をにらみつける栞南に、孝太郎は薄ら笑いを浮かべている。


「昨日のエレベーターの時、ドキドキしただろ？」

「昨日のエレベーター？」


混雑して孝太郎と身体が密着しそうになった時のことを言っているようだ。

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