猫かぶりの同居生活
「ん? そうなのか?」

 緩いウェーブがかかった黒髪の男の人が身を乗り出してくる。

「いや、俺が猫を…… あー、俺もよろけてその拍子に」

「お互い様ってわけか」

「じゃあ、どうする?」

 ベッドの端に腰掛けたのは艶やかな赤髪の男の人。左耳にはたくさんのピアス。

 眠っている間にわたしは四人の男性に囲まれていた。

「変更はなしだ。彼女はうちへ連れて行く」

「は?」

 慌てて口を手で押さえる。そんなつもりはなかったのに、馬鹿にするみたいな声が出てしまった。

 だけど、眼鏡を掛けた人は表情を変えずわたしと視線を合わせる。黒眼がちな大きな瞳にドキッとする。

「医者は問題ないと言ったけど、後から症状が出ないとも限らないからな。しばらくうちで面倒を見る」
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