君のとなりに
君のとなりに
 目が覚めると、隣には降谷がいた。そっとその表情が見たくて顔を覗き込むと、綺麗な横顔が寝息をたてている。

「…寝顔はちょっと可愛いとか…ずるいし。」

 そんな桜の独り言など、降谷に聞こえるはずもない。
 桜の心臓はドクンと一度だけ鳴った。

(…本当に手を出さないんだもんなぁ、降谷さん。)

 手を出されたかった気持ちも、少しはあったのかもしれない。それでも、こうしてただ隣にいてくれる降谷に安心している気持ちの方が圧倒的に大きい。

「…男の人って睫毛長くて羨ましい。」
「…朝からうるさい。独り言女。」
「…起きてた?」
「…お前がうるさいから起きた。」

 いつもよりも低い声。朝はそんなに得意じゃないのかもしれない。

「…どこから、聞いてた?」
「男の寝顔なんて可愛くねぇよ。」
「最初から!」

 桜の頬が赤く染まった。好き勝手言っていた自分が馬鹿みたいだ。

「…熱でも出たか?」
「…出てない。」

 熱じゃない。でも、ドクンとうるさい心臓が真実。

「黙って寝てろ。朝飯作る。」
「ま、待って。」
「は?」

 熱があるとまだ思われているだろうか。でも、それならそれでいい。

「降谷さん。」
「…だから、何だって。」
「やっぱり、あたし…好き、かも。」

 声が震えた。生まれて初めての、告白。
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