アイスクリームの美味しい食し方
「キィが離婚したいと言っても
止めなかったし、

パリでモデルとして成功した時も
他の男と結婚した時も、
何も言わなかった。

私よりキィの方がずっと若くて可能性がある。
その未来に私はいらないと思ったんです。

自信がないくせに、
最後の抵抗として、
キィと縁が切れることのない
トロワにしがみつき、
引越しをせず、
電話番号も変えることが出来なかった。

ただの未練がましいおっさんなんです。」

私と新は、
もう何も言えなかった。

お姉さんは、
何度も首を振って泣いていた。

「みんなはキィを
ストーカーか何かと勘違いしてると
今日分かって驚きました。

君は、ただ、
私に引っかかった哀れなお姫様だ。

君より先に死に、
君に残せるものもない。

私が君にあげられるのは、
死ぬまでの時間だけだ。
一秒も逃さず、君に捧ぎます。」

店長は、
お姉さんの涙を拭った。

「それって、
いつもそばにいてくれるってこと?」

お姉さんは泣きながら言うと、
店長は優しく頷いた。

「もう、隠れなくていいの?
近くにいていいの?」

「もちろん。」

「うっうわあああん。」

お姉さん達が抱き合う姿を見て、
私と新はその場を後にした。

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