アイスクリームの美味しい食し方
朝、パートに向かう途中、
叔母さんは申し訳なさそうに話した。

「昨日は驚かせてごめんね。
実はね。
お母さんにはもう了承をもらってるの。」

私は、心臓が締め付けられるのを感じた。

母が、すでに知っている?

「お母さんね、ずっと電話の向こうで泣いていたわ。

昨日主人は言ってはいけないと
言わなかった一言があるのよ。」

叔母さんが、
薄暗い坂道を降りながら、
きっと前を向いた。

「養子になってくれるのは、
お母さんが亡くなってからの話よ。

私たちがその時あなたを支えたいの。」

潮風が香る。

暗くてわかりにくいはずなのに
表情が手に取るように分かる。



一瞬、叔母さんの横顔が母に見えた。



身長も顔立ちも全然違うのに、
母にそれを言われた気がした。

強くなりなさい、って。



何があっても
強く生きなさいって。




「だから、
今はお母さんのそばにいてあげなさい。

病院の近くにアパート借りて、
出来るだけお母さんとの時間を大切にして?

私たちはもう、あなたに
お母さんが治るまでここで待ちなさいなんて無責任なことを言えない。」

叔母さんは涙を拭って、
私を見た。

私は、ありがたいのと
何か心が震えて、
確かに力をもらったのだ。

分かるだろうか。
身体中が熱く、
ただ嗚咽を吐き出して
泣き続けたのだ。


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