キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


山田さんは店名と名前を名乗ったあと、突然親しげに話しだす。

もしや、相手は他の店の従業員かな。同じパートさんとか?


「そうそう、今日来てるのよ。例の子」


勝手に推測していると、そんな声が聞こえてきた。

今日来てる子って……それって、私のこと?


「うちの店長にも愛想良くして、でしゃばってたよ」


……もしかしなくても、私のことだ。

もしや、いきなりサングラス二本売って褒められたのが気にいらないとか?

若干ムカついたけど、他の店でトラブルにならないよう、私は聞こえないフリをして黙っていた。

声をひそめているつもりなのか、それとも私に聞かせようとしているのか。

非常に微妙なボリュームで、山田さんは話し続ける。


「うん、うん……全然大した事ないよ。菜穂ちゃんの方がキレイだった。矢崎店長も趣味が悪いわー、あんな普通の子に誘惑されるなんて」


誘惑?いったいどこから、そんな話が?


「若さを武器にして、店長を味方につけて自分だけクビを免れるなんてね」


ははあ……妖怪おしゃべりババア、もとい平尾さんの仕業だな?

自分がパート切りにあった腹いせに、私の悪い噂をあることないこと山田さんに話したんだろう。

しかも他の店から電話がかかってきたということは、そこのパートさんにも流れているってことか。


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