キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「幸せなんだねえ……いいなあ」


ため息をつくと、麻耶ちゃんは心配そうにこっちをのぞきこんだ。


「はっちゃんは?この前会った人と、つきあってるんじゃないの?メガネのイケメンさん」

「うん……そうなんだけど……」

「……わけありなんだね?」


麻耶ちゃんのメガネが、探偵のようにきらりと鋭く光った。


「聞いてくれる?」


私は昨日までのことを、麻耶ちゃんに話す。

話を終えると、最初は目をキラキラさせていた麻耶ちゃんが、鼻の穴を広げて憤慨した。


「なんなの!最初は素敵なオフィスラブ物語だと思ったのに……鬼店長、許すまじ!」


座ったままだんだんと、足で床を踏み鳴らす。


「それにしても、脇役の長井くんは良い人だね。私だったら、そんなに優しくされたら好きになっちゃう」

「だよね……」


昨夜、長井くんはタクシーに一緒に乗り、部屋の前まで私を送り届けてくれた。

その間、私の弱みにつけこんで口説いてくるようなこともなく、部屋に入ることもせず、ひたすら『大丈夫だよ』と私を安心させようとしてくれた。


「長井くんを好きになれたら、どんなに良かっただろう」


もしかしたら、運命の人は俊じゃなくて、長井くんなのかも。

いつも隣にいてくれて、温かい気持ちをくれる。

私のことを好きだと言ってくれて、応援してくれて、支えてくれて……。


< 147 / 229 >

この作品をシェア

pagetop