キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「幸せなんだねえ……いいなあ」
ため息をつくと、麻耶ちゃんは心配そうにこっちをのぞきこんだ。
「はっちゃんは?この前会った人と、つきあってるんじゃないの?メガネのイケメンさん」
「うん……そうなんだけど……」
「……わけありなんだね?」
麻耶ちゃんのメガネが、探偵のようにきらりと鋭く光った。
「聞いてくれる?」
私は昨日までのことを、麻耶ちゃんに話す。
話を終えると、最初は目をキラキラさせていた麻耶ちゃんが、鼻の穴を広げて憤慨した。
「なんなの!最初は素敵なオフィスラブ物語だと思ったのに……鬼店長、許すまじ!」
座ったままだんだんと、足で床を踏み鳴らす。
「それにしても、脇役の長井くんは良い人だね。私だったら、そんなに優しくされたら好きになっちゃう」
「だよね……」
昨夜、長井くんはタクシーに一緒に乗り、部屋の前まで私を送り届けてくれた。
その間、私の弱みにつけこんで口説いてくるようなこともなく、部屋に入ることもせず、ひたすら『大丈夫だよ』と私を安心させようとしてくれた。
「長井くんを好きになれたら、どんなに良かっただろう」
もしかしたら、運命の人は俊じゃなくて、長井くんなのかも。
いつも隣にいてくれて、温かい気持ちをくれる。
私のことを好きだと言ってくれて、応援してくれて、支えてくれて……。