キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「……ねえ、はっちゃん。俺、こんなことしてる場合じゃないと思うんだ」


いてもたってもいられなくなった私は、閉店後に電車に乗り、長井くんを誘って、お店の近くの焼肉屋に来ていた。

私の歓迎会を開いた、あの汚いけれど美味しい焼肉屋さん。


「だって、母親に挨拶までしておいて、消えたんだよ?おかしいよね?どう思う?」

「飲みすぎだから。あと、やさぐれたってどうしようもないでしょ」


長井くんは私のジョッキを奪い、冷静に返す。

いいじゃん、ちょっとくらいヤケ酒したって。

彼氏が蒸発しちゃうなんて、一生にそうそうあることじゃないし。


「はあ~……絶対、俊が運命の人だって、思ってたのにな~」


ジョッキを奪い返そうとするも、手が届かず、そのままベタベタのテーブルに突っ伏す。


「運命の人?ああ、例の占いのね。結婚相手かもってやつでしょ?」

「それそれ。モノにできるかは、私の頑張り次第だって言われたんだよね。私の力不足だった……」

「だからあ。ヤケ酒してる場合じゃないでしょ。未練があるなら、実家の住所や電話番号調べるとか、探偵雇うとかして、なんとかしようよ」


長井くんの華奢な手が、私の頭をぱんぱんと強めに叩く。


< 212 / 229 >

この作品をシェア

pagetop