キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
私は深呼吸して息を整え、再び水をごくごくと飲んだ。
ああ、びっくりした……。
まさか矢崎店長が、自分の身を挺して私を助けてくれるなんて。
落ち着きを取り戻し、店長が背伸びして取ってくれた台帳を受け取る。
「株主優待の記録帳も忘れずにな」
「あ、はい!」
「おう、良い返事だ」
店長がぽんぽんと、私の頭をなでた。
……ちょっと待って。
あの鬼店長が、私の頭をなでたですって!?
硬直して動けないでいると、店長は存外優しい声で話しかけてきた。
「いいもん売ったじゃねえか。えらいぞ」
あ、ああそうか、高いメガネが売れたからご機嫌なのね。
店長の予想外の行動の理由がわかって、ホッとした。
そうでなければ、こんなことがあるわけない。
「店長、そろそろ休憩に行ってもいいでしょうか……」
疲れた杉田さんの声が近くから聞こえた。
我に返っって時計を見ると、午後3時。
お客様の波が、やっと途切れたみたい。
長井君もレジを打ち、接客を終えようとしていた。
「ええ、どうぞ。遅くなってすみません」
店長がそう言うと、杉田さんは目を見開いた。どうしたんだろう?
「で、では……」
そそくさと杉田さんが行ってしまうと、店長は私を手招きした。
お店のパソコンの前に連れてこられた私は、一枚プリントアウトされた書類を渡される。
そこには、各従業員の客数や客単価が載っていた。