キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
突然のことに驚く暇もない。
ただ戸惑っていると、杉田さんは声が出ない私の肩を、マッサージし始めた。
ぐいぐいと、けっこう強い力でもんでくる。
「こってるね~、鉄板が入ってるみたい」
たしかに私は肩こり持ちだけど。
杉田さんの口調は軽くて、悪気がないように聞こえる。
好意でマッサージをしてくれているのかもしれないけど、男性の先輩にいきなりこんなことをされては、さすがに気持ち悪い。
なんなの。なんのつもりなの。
「あの、もう大丈夫ですから……」
手を離してもらおうとするのに、杉田さんは片手を私の肩に乗せたまま、私の目の前に免許証入れを差し出す。
「見てよ。これ、僕の息子」
ひらりと開かれたそこには、小学生低学年くらいの男の子の写真が。
「へ?ああ、ええと……可愛いですね」
正直、普通の子だと思ったけど、気を遣ってそう答える。
すると杉田さんはぼそぼそと話はじめた。
「ありがとう。この子が産まれてから嫁が働かなくなっちゃって、僕の稼ぎだけでやってるんだけどけっこう大変なんだ」
よく聞くと、杉田さんは正社員じゃなく、契約社員だったらしい。
そんなこと知らなかった私は、リアクションに困って黙っていた。
早く離してくれないかなあと思いながら。