キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「でも子供は可愛いから、なんとか頑張らなきゃね……」
そう言って写真をしまうと、また両手を私の肩に置いて、マッサージを再開した。
だんだんとその手が前に異動してきて、肩と呼ぶにはきわどい、鎖骨の上あたりに指先が触れる。
ああ、だめだ。気持ち悪い。
「私、勉強してきます!お客様がきたら呼んでください」
杉田さんの手を振り払うように立ち上がると、急いで補聴器ルームに飛び込んだ。
うちのお店では補聴器も扱っている。
けれどその基本も何も知らない私は、暇なときに店長に検査器の使い方を覚えろと言われていた。
人が二人くらいやっと入れる大きさの、防音になっている個室に入って息をつく。
とりあえず安心かな。少ししたら出て行こう。
それにしても杉田さん、突然どうしちゃったんだろう……。
ぼーっと機械をにらんでいると、安全だと思っていた個室のドアが突然開いた。
「それ、使い方わかる?教えてあげるよ」
杉田さんはあくまでも、親切心を前面に出してくる。
けれどその笑顔も、今では裏があるようにしか見えなかった。
「え、でも……ここにこもっちゃったら、お客様が来てもわからないし」
「大丈夫。ちょっとだけ開けておけば、自動ドアが開く音くらい聞こえるよ」
下心がないなら全開しとけっつうの。
はいそうですかなんて言う女子がいるか。