キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「ああー……やっぱりいいです!そういえば矢崎店長に雑品の注文しておけって言われてるんでした!急いでやらなきゃな~っと」
ドアをふさぐようにしていた杉田さんを押しのけるようにして、その場から離れようとすると。
──がし。
ビックリして、思わず振り返ってしまった。
なんと、私の手が、杉田さんにつかまれていた。
「……もう少し一緒にいようよ」
耳元で囁かれるようにして、全身に鳥肌が立った。
頭が警鐘を鳴らしているのに、軽くパニックに陥った私は、何て言い返したらいいかもわからなくなってしまった。そのとき。
「はっちゃん、差し入れー!新作のお菓子がたくさんあって迷っちゃったよ!」
裏口が開いて、長井くんが小走りで駆け寄ってくる音と声がした。
杉田さんはぱっと手を離す。
私は逃げるようにして、加工台の裏に走っていって隠れた。
「……大丈夫だった?」
コンビニの袋を提げた長井君が、私の近くに来てくれた。
「外から見たら、誰もいないみたいだったから、まさかと思って。なにもされなかった?」
「な、なんで……?」
なんでそれだけで、私がピンチだと見抜けたんだろう。
鳥肌が立った腕をさすりながら見上げると、長井くんは困ったような顔でため息をついた。
「あの人、病気だからさ。色んな店で女の子にセクハラしてんだよ。こっちの地区じゃ有名」
「そんな」