キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


そう言うと、矢崎店長は私の頭の上に手を近づけ……そのまま、そっと膝の上に下ろした。

頭をなでられるんじゃないかと思った私は、拍子抜けする。

セクハラだと思われるといけないから、触れるのはやめておこうということなのかな。

店長になら、触れられてもいいのに……。

見上げれば、真剣な表情の矢崎店長の瞳と目が合った。


「……心配するな。俺の店で、そんな卑怯なことは二度とさせない。俺がお前を守ってやるから」


どくん、と心臓が跳ねて口から飛び出しそうになる。

まさか、矢崎店長の口からそんな言葉が出るなんて。


話が途切れる。

また沈黙が訪れる。

雨音が私たちを外の世界から隔絶してくれているような気がした。


もう少し、ここにいたい。

このまま、時間が止まってしまえばいいのに。


「じゃあ、そろそろ帰るわ。話してくれてありがとう」


私の想いとは裏腹に、店長はあっさりと別れを告げる。


「あの……良かったら、少し上がっていかれませんか。お茶だけでも」


本来なら車が止まった時点でそう提案するべきだったのだけど。


「いや、いい。帰って試験勉強しなきゃならないから」

「あ、そうですよね!すみません、送っていただいて、話まで聞いてもらって……」

「いいんだよ。それも俺の仕事だから」


< 73 / 229 >

この作品をシェア

pagetop