サイレント

one

幸子は放課後の保健室のベッドの上に寝転がりながら携帯の画面を見つめていた。

保健室にはベッドが三つ並んでいて、1番扉に近いベッドが幸子の特等席になっていた。幸子はその特等席に寝転がり、四方にカーテンをひいて完全なプライベートスペースを確保していた。

今日は午後から授業がなく、代わりに一人ずつ担任との面談を行い、成績表を受け取らなくてはいけない。

普段から明るく染めた髪のことで教師から目を付けられている幸子は「お前には話さなくちゃならないことがたくさんあるから1番最後だ」と担任から言われ、3時間も待たされる羽目になってしまった。

最近携帯小説を読むことにハマっている幸子はさっきからずっと時間潰しに新しく見つけたお気に入りの小説を読んでいる。

幸子はそれを読みながらカーテンの外で忙しそうに動いている樹里の様子を観察していた。

樹里は保健室の先生だが、歳も若く、全然先生という感じがしない。
担任をはじめ、教師なんか皆大嫌いな幸子だけれど、樹里にだけは普通に話が出来る。

何より、その樹里が今読んでいる携帯小説の主人公にそっくりなのだ。
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