君を好きな理由
ま、まぁ、私は子犬系の男は嫌だけど。

でも、どう対処していいか解らない人も苦手。

葛西さんは、掴もうとしたら、ゆらゆら紳士的にかわされそうだけど、放っておいたら構ってちゃん?

考えてみなくても、やっぱり一癖も二癖もありそうな人たちの友達である葛西さん。

あの二人は結構解りやすい方だけど、実際問題として葛西さんは一番解りにくいのかも。

しばらく悩んでいたら、またカラカラとサッシが開いて、肉の塊を持った当人が出てきた。

「今日は牛たたきを作りますが、何かリクエストありますか?」

……当然のように自炊生活するつもりらしい。

「……美味しければなんでも」

ひょいっと眉が上がって、それからクスッと笑顔が見える。

「戸惑ってますねー」

「それなりに……」

「俺としては、食わせないと……と言う気分ですけど」

どこか呆れたように言われて、瞬きをする。

「私? またどうして?」

「コンビニパン生活では、男の一人暮らしより悪い」

「え……そう?」

「ですよ。磯村は引っ越す前は定食屋通いでしたし、山本は実家暮らしで、食事バランス良いです」

……わるかったわね。

「たまには作るわよ」

「レトルトは作ったカウントに入れませんからね?」

「う……」

見透かされてる。

網にお肉を乗せる葛西さんを見ながら、紅茶を飲んだ。


「テラスで食べるの?」

「どちらでも。外でも大丈夫であれば、テーブルを出しますよ」

「夜になると寒いかな。今でも涼しい感じよね? どうしよう」

コテージと目の前の雑木林を交互に見ていたら、静かに観察されていた事に気がついた。

「どうかした?」

「いや。楽しんでいるな、と、思いまして」

「バーベキューグリルでお料理してるの見るのも初めてなのよ。アウトドアなんて小学校の炊事遠足以来だし」

唇を尖らせると、クスッと笑われた。

「……何か羽織るもの持ってきていますか?」

「ある! 着てくる」

文庫本と、空になったカップを手に取り、葛西さんを振り返る。

「なにか手伝う?」

「キッチンに氷水の入ったボウルがありますから、持ってきてください」

「オッケー。待っててね」

パタパタと文庫本とカップをテーブルに置いて、キッチンに向かうと氷水のボウルが見つかった。


だけど、他のものも見つかった。


「……手早い」

細かく刻まれたネギに、スイッチの入った炊飯器、すでに茹でられて、ざるに上がっているオクラに……これは白菜のお浸し?

私、そんなに長いこと悩んでいたかな。

とりあえず、氷水を持っていこう。


「どこに置けばいーい?」

「あ。頂きます」

ボウルを葛西さんに手渡して、それからパーカーを取りにまた部屋に戻る。


あの手際の良さはなんだろう。


あらかた用意が終わって、陽も暮れた頃、出来上がった料理を見ながら首を傾げた。

「日本酒飲みますか?」

「飲む飲む」

ワインクーラーに日本酒のボトルは、何だか奇妙だけれど、使い方としては正解。

「家で本読むのが好きとか言って、実はアウトドア派?」

「たまに、ですかね。疲れた時に、叔父に鍵を借ります」

「……ふぅん。でもたまにならいいかもね。森林浴」

都会の喧騒を離れて、一息……なんて、ちょっと憧れる。

「葛西さんて、実は家庭的よね」

「実は……?」

日本酒の入ったプラスチックコップを差し出しながら、不思議そうな顔をされた。
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