君を好きな理由
「前にも言いましたが、俺は片付けが苦手です」

「あー……うん。でも、これだけ料理上手なら、今まで付き合った彼女にも引かれたんじゃない?」

料理のうまい彼氏って、嫌がる人は多い。

“女の癖に料理も出来ない”とか言う人は、いまだに多いし……


私は絶望的だし。


「俺は作るのが好きなだけですよ。それに、今までお付き合いしてきた方は家にいるより外出したがる方が多かったですし……どうでしょうね?」

「あ。何となく解るかも」

高級レストランとか行きたがる時期ってあるのよね。

一種のステイタスと言うか。

「支払った金額で愛情を計ってくる方ばかりでしたが」

しれっと無表情で葛西さんは牛たたきを食べる。

「…………あ、そう」


社長令息のダークサイドですね。

いきなりすぎて困るけど。

どのように返事をすれば良いのでしょうか?

「……えーと。じゃ、私がブランドバック買ってぇとか、ねだったら幻滅するパターンね?」

「欲しいですか?」

不思議そうな顔をするから苦笑した。

私はねだらないと思われてるわね?

そりゃあ、くれるって言うならもらうけど、使いやすければ、大したこだわりもないしなぁ。

でも、意味のないプレゼントって、実はもらっても困るだけなんだよね。


「逆パターンも知ってるかも」

「逆パターン?」

「デートの度にプレゼントくれる人。別れるときに、あんなにお前にはお金をかけたのに、どうしてだって詰め寄られたわ」

「ああ……いますね。たまに」

「札束で横っ面叩くような真似は勘弁して欲しいわよね。勿論、頂いたプレゼントは宅急便で送り返したけど」

「もらっておけば良かったじゃないですか」

「嫌よ。可愛らしいテディベアだの、白いフリルのエプロンだの、ハートキラキラのプリティ過ぎる指輪だの」

「……はぁ」

「私に似合うと思う?」

「まったく思いません」

「…………」


それはそれでムカつくのはどうしてでしょう。

「だからって、聴診器もどうかと思うんだからね?」

前にもらったけど、使わないで診療鞄に入れっぱなしだ。

「実用的だと思いましたが、ダメでしたか?」

「うーん。少し大きいみたいたがら、使うときっと耳が痛くなるわね」

「ああ。合わないですか」

「うん。どうすればいい?」

「どうしろと言われましても、差し上げた物を返されても困ります」

「なんだか勿体ないなぁ」

結構いい値段するのに。

たたきをポン酢で食べながら、クピクピ日本酒が進む。

目があって、にやっと笑った。


「……お口に合ったようで」


はい。とってもおいしいです。


「自然の中で、美味しいもの食べるって幸せよー」

「明日は普通にバーベキューにしますか?」

「バーベキュー? 野菜とかお肉とか串にさすの?」

「それでもいいですし、バンズがありますから、ハンバーガーも作れます」

「私は何を手伝えばいい?」

「……お気持ちだけもらっておきましょう」

「……ごめんなさい。後片付けなら任せてちょうだい?」

そういいながらも、同時に吹き出した。

「何だか、いいバランスね。私たち」

「そうかもしれません。思っていた以上にはるかさん、ざっくりしてました」

……ざっくりって貴方。

それはどういう意味よ。
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