君を好きな理由
ある程度の年齢になれば、そういう事が目的のお付き合いもあるじゃない。

嫌いな人とはさすがに無理だけど、たいして好きじゃなくても、それなりに好意があれば。
付き合っていけば情はわくものだし、それなりにでも情があれば出来てしまう。

まぁ、基本的に私は成り行きに任せての見知らぬ人は無理だけど……

今までの彼と即効でそうなった、とは言わないけれど、旅行に誘われる目的として、そういうものだと思っていた。


「……葛西さんは、どういった目的で旅行に誘ったわけ?」

「毛嫌いされていますので、よく知って貰おういうのが、まず一点」

け……毛嫌いって、やっぱり解っていながら“付き合ってください”押しだったのかい、葛西さんよ。


「後は生活面で無頓着そうでしたので、せめて食事の面倒をしたいと思ったのが一点」

確かに無頓着ですよ。
連休なんてあったら、確かに食事も忘れがちですよ。

普段だって、華子達が来ないと昼休みも忘れますしね。

って、あんたは私のおかんですか。


「あとは、誰にも邪魔されず、二人きりになりたいじゃないですか」

「普通はそれ、第一目的でしょうよ」

目を細めたら、苦笑が返ってきた。

「まぁ、そうなんですけど」

「困られても困るな。でも、考えてくれてるのは解る」

そうね。
色々と考えてくれてるのは、よーく解るわよ。

「相手に合わせてばっかだと、そのうち疲れるわよ?」

「いきなり第三者みたいな事を言い出さないで下さい。大丈夫ですよ。料理は趣味ですし。それに、好きな人の心配をするって、実は気分がいいもんです」

「そんなに心配?」

「そうですねぇ。塩の塊みたいなお握り握っちゃう人は、少々心配です」

……もう二度と握るもんか。

無言でご飯を食べていたら、小さい忍び笑いが聞こえてきた。

「まぁ、俺を知ってもらうと言うよりは、はるかさんの新発見の方が多いような気がしますが」

「え。そう? 私は見たまんまだと思うけど」

「それは、はるかさんが“見せたい”姿でしょう」

「何を根拠に言うわけ?」

葛西さんはお浸しの最後の一口を食べ、それから小さく頷いた。

「文庫にロマンティックサスペンスを持ってくる。ちょっとのからかいに過剰反応を示す」

……何を言いたい。

「ロマンティックサスペンスは、相思相愛多いですしね。普段は際どい事も平気で言うくせに赤くなるとか、初な反応も可愛いです」

たぶんそれは……

「どこかでスイッチ入るのよね。医者としては、際どい事も恥ずかしがって話さないわけにはいかないし」

「だからと言って、あれはないでしょう、あれは……」

「あれ?」

「俺は男なので、ぶら下がっているものは実用的ですよ」

「ぶっ」

思いきりお酒を吹き出して咳き込んだ。

それってあれだ。初めて会話をした時の……

「ゲホッ……あによ、根に持ってるわけ?」

「まさか。でも、ショックでした」

ニコニコと言う台詞でもないんだけど。

「低くても明らかに女性の声で、ぶら下がってはないだろうと思いました」

「時々、手段と言葉を選ばないのよ」

「でしょうね」
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