【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「……もしかしてオレ、転ばされた? え、これ柔道ってヤツ? 空手?」
「合気道。」
「合気道……へぇ……。」
体を起こした松江大地が、物珍しそうに僕を見る。
……久々の感覚に、手が軽く震えていた。
人を地に寝転ばせたのは、一体何年ぶりだろう……。
……あの日以来だから、もう3年にもなるのか。
「美衣奈からも潤平からも聞いていない情報だ。……いつから、合気道をやっている?」
「保育園からだよ、もう止めたけど。」
答えたあとに、なんで僕がコイツの問いに答えなきゃいけないんだと思った。
教える必要の無いプライベートを教えてしまったことに、ほんの少し嫌悪感を感じる。