【完】一粒の雫がこぼれおちて。
腕に抱えていた倉橋を、背中へと背負い直した。
「これ、もらってくから。」
僕がそう言えば、松江大地はもう何も言わない。
さっきまでは〝オレの〟とか言ってたくせに、その威勢はどこにいったのか。
今までの視線とは違う、頼りない視線で、僕と倉橋を見た。
ふと、この部屋に入る前の松江、弟の潤平を思い出す。
『……本当はあんなこと、したくないんだよ、兄さんだって。』
……本当、意味不明。
したくないなら、なんでするわけ。
しなきゃいいのに。
チラッと視線を向けた、松江大地の目元。
特に普通に見える、薬をやっているようには見えない。
何かの中毒にかかっているようにも見えない。