【完】一粒の雫がこぼれおちて。
じゃあなんで、倉橋を傷つけるんだろ……。
なんて思ったけど。
そこまで内側を詮索するほど、僕と松江大地の関係は近くない。
むしろ、今知り合いの中で1番遠いと思う。
背中の上の倉橋が落ちないように、しっかりと抱えて。
僕は何も言わず、部屋を出た。
「しずく……。」
部屋を出る瞬間、そう呟いた松江大地の表情は。
どことなく、寂しそうに感じた。
そう、まるで。
天涯孤独の、独りぼっちのように。
「和泉……。」
「邪魔したよ、松江。あと、松江兄と大河内に言っておいてくれないかな。」
「今度、倉橋…………僕のものに手を出したら、容赦しないって。」
この時、僕はもう気がついていた。
僕の中でこの女、倉橋の存在が、とてつもなく大きくなっていることに。