【完】一粒の雫がこぼれおちて。





side 倉橋しずく





私の脳に残る、最も古い記憶と言えば1つ。


両親に、拾われた瞬間だった。



「じゃあね、しずく。3日後には帰るから。」


「うん……いってらっしゃい、お母さん。」



両親は1度、生まれたばかりの私と、顔も知らない兄を施設に捨てた。



正直、捨てられた日のことは覚えてない。


私は生まれたばかりだっただから、当たり前と言われれば当たり前なんだけど。



私たちを1度捨てて、あとから私だけを引き取った両親。


両親が私を迎えに来たとき。


3つ年上ならしい兄は、もう他の人の家族となって、施設にはいなかった。



このとき、私は。


見たこともない兄を哀れんだ。


あと少しここで待っていれば、私たちの本当の家族は迎えに来たのに。





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