【完】一粒の雫がこぼれおちて。
だけど、それは間違いなんだと直ぐ知ることになる。
「んっ、ぁ、あぁ……!」
放任主義な母親。
2日3日、顔を見かけないのが当たり前で。
よく知らない男の人を、家に連れ込んでいた。
「本当、使えねえ奴等ばっかりだな! 死ね、死ね!!」
暴力を奮う父親。
人前では優しくて気配りのいい人を演じていたけど、本当の彼はいつも私を殴る怖い人で。
……私はいつも部屋の隅で、膝を抱えて1日を過ごしていた。
「お兄ちゃん、おにいちゃん……っ。」
周りの人が自分の兄に向かってそう呼ぶように。
何度も私は、自分だけ普通の家庭に引き取られた優しい兄を想像して、その想像に縋った。
……じゃなければ私は、天涯孤独で死んでしまっていたかもしれない。