【完】一粒の雫がこぼれおちて。





「え……?」



渡してくれた彼は上級生だった。


私の3つ上の6年生で、話したことはそれまでに無かった。



だから急にパンジーを渡されたとき。


私は目が点になるほど驚いた。



「これをやる。やるから、オレのものになれ。」



彼の名前は、松江大地。


そう、今では私に愛情と言う名の暴力を振るう、あの大ちゃん。



「オレの名前は松江大地。倉橋しずく、オレの女になれ。オレがお前を守ってやる。」



当然、当時の私が〝女〟とか〝守ってやる〟とか、そんな詳しいこと分かるわけない。


私は元々女の子だし、一体何から私を守るというのか。



そのうえ私は人を信じられなくなっていたから、彼の言葉を理解しても、信じることは出来なかった。





< 107 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop