【完】一粒の雫がこぼれおちて。





男の泣き顔なんて、見たくもない。


自分よりも背の高い松江大地の腹に拳を軽くぶつけて、僕は頷いた。



「誰よりも、幸せにしてみせる。」


「っ……あぁ……!」



好きだ、しずくが。


誰よりも。


今なら、言える。


誰よりも、しずくが好きだと。



1度は冷えた僕の心を温めてくれた彼女が。


日だまりのようなしずくが、心から好きだと。



今だからこそ、僕は言える。



「とりあえず和泉、一発殴らせろ。」


「……はぁ!?」


「オレからしずくを奪ったんだ、当然だろ。」



手加減無しに殴り掛かって来た松江大地。


僕はそれをひらりと避けて、背中に肘鉄を入れた。



「いっ!?」


「……よわ。」



その場にしゃがみ込んだ松江大地が「これでもオレ、先輩だぞ……?」なんて言うけど。


こんなに喧嘩弱い先輩も……義兄も、本気でごめんだと思った。





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