【完】一粒の雫がこぼれおちて。
そしてもう1つ。
「しずくって誰?」
「あぁっ!?」
「僕、しずくなんて人知らないんだけど。」
「…………。」
そんな奴、僕の周りにいたか?
僕にくっつくと言えば、今隣でぐーすか眠りこけるコイツだけ……あ……。
「そう言えば、倉橋の名前はしずくだっけ。」
「てめえ……っ、俺をおちょくってんのか!?」
いや、断じてその気は無い。
ただ単に。
「倉橋の下の名前なんて正直どうでもいいから、覚えてなかっただけ。」
覚えてなかったというより、覚える気がなかったが正解。
今“大ちゃん”に言われて、漸く気付いたという感じだ。
元々、僕は人の名前を覚えるのが苦手だし。