【完】一粒の雫がこぼれおちて。
2年生になってからのこの1ヶ月、倉橋にはずっと付き纏われていた。
付いて来るなと言っても付いて来て。
僕を好きでもないくせに、いつも僕を追って来る。
……こんなこと、初めてだった。
「はっ、はっ……何、だよ……!」
1ヶ月、ずっと一緒にいたのに。
こんなにもアイツに心を乱されるのは、今日が初めてだった。
「くそっ……おさまれよっ……おさまれ!!」
胸が苦しい、呼吸が出来ない。
顔の熱は下がらなくて。
頭には、さっきの倉橋の笑顔が何度もリピートされる。
「何なんだよ……!」
……この時の僕は、自分のことでいっぱいいっぱいで。
電話で言われた伝言のことなんて、すっかり忘れてしまっていた。
そのことで後悔することになるなんて、考えもしなかったんだ。