【完】一粒の雫がこぼれおちて。
side 倉橋しずく
安らかに眠る、隣の席の和泉くんの顔を見詰める。
きっと、和泉くん本人は知らない。
いつも顔を見せないように伏せて眠る和泉くんだけど。
寝てしばらくしたら、和泉くんは必ず左を向く。
だから私の席からは、和泉くんの寝顔が見放題。
朝1限目の時間は絶対眠る和泉くん。
いつ見ても、眼鏡を外したその寝顔は綺麗で、美しくて、儚い。
和泉くんの眼鏡を外した姿なんて、私しか知らないんじゃないのかな。
学校にいる間は絶対、和泉くんは眼鏡を外さないから。
「んん……。」
「……良い夢見てね、和泉くん。」
目に掛かる前髪をソッと除けて。
無意識に微笑んだ和泉くんの寝顔に、ほんの少し胸の高鳴りを感じた。