【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「……へぇ、お前が美衣奈の言ってた和泉蒼空?」
「……そうだけど。だったら何? 早く返してよ。」
松江大地の言った〝美衣奈〟が、これまたクラスメートの大河内美衣奈だということには直ぐに気がついた。
今この家に充満している香水は、どこかで嗅いだことがある気がしていたけど。
それは主に学校、クラスで。
1番強く香ったのは、大河内の近くにいたときだったと思う。
大河内とは席も近いし、多分間違いない。
それにまず。
あんなやる気の無い松江が1人、倉橋の見張り役につくとも思えない。
コイツ等の味方なのか、僕の味方なのか……よく分からない発言してたし。
きっと僕が来るちょっと前まで、大河内はここにいたんだろう。
……まぁ、とりあえず。