あの日失くした星空に、君を映して。


それから2週間。


私がベッドから動かないせいで打撲などの怪我の治りが遅く、予定よりも1週間遅れての退院。


捻挫については激しい運動をしないように注意をされただけで、経過等は問題ない。


眼科の大岩先生先生にだけはこれからもお世話になるけれど。


「うん、いいね」


ガーゼの取れた私の目を見て大岩先生が言った。


入院中に入れられた義眼は仮のものらしく、私用の義眼が用意された。


はめ外しの練習を初めてすぐの頃はこわくてなかなか上手くできなかったけれど、何度も繰り返すうちに慣れた。


最後の練習、と大岩先生の前で義眼のはめ外しをして、OKサインをもらう。


大岩先生は面白い先生で、塞ぎ込んだ私のもとに眼科を抜け出して足重よく通い、話をしてくれた。


それは目に関係のない、ただの大岩先生の日常譚。


毎日話を聞くうちに自然と笑えるようになったのだ。


「先生、ありがとうございました」


隣でペコリと頭を下げるお母さんにつられて、私も慌ててお礼を言う。


「あ、ありがとうございました」


「いいえ、こちらこそ。鏡華ちゃんと話すのは楽しかったからね」


「先生の話が面白いからですよ」


そりゃあ最初はしつこいって思ったけれど、明日からは先生に会えないんだと思うと寂しい。


「じゃあ、また2週間後に」


病院の外まで見送ってくれた大岩先生に手を振って車に乗り込んだ。


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