あの日失くした星空に、君を映して。


「ねえ鏡華…本当は何があったの?」


本当は、ということはお母さんは気付いてるんだろうな。


この紙に書いてある


『生徒の下校後に実施したワックスがけの不備』


っていうもっともらしい言い訳。


言われてみれば、私はあの階段を踏み外したわけじゃない。


何かに滑ったのだ。


ワックスであることは間違いないけれど、あの段だけなんて絶対におかしい。


「…いじめられてるの?」


「違うよ」


美和さん達に嫌がらせを受けはしたけれど、大したことじゃなかったし、いじめとは言えない。


私だってそうは思ってなかったんだもん。


でも…さすがにこれはやりすぎだ。


階段から落ちるように仕向けたことだけは度が過ぎている。


私が目を失ったことをこんな紙切れ1枚で済ますの?


美和さん達はどうなったんだろう。


あの時、隣に来てくれた佐山さんは今どうしているのかな。


………大丈夫かな。


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