咲かない花
女生徒が全員部屋から出たところで、私は二宮くんに、「なに」と言った。
またその言い方が冷めてて、可愛げなんて全然なくて。

まさに枯れ木だ。
行き着いた考えに、つい皮肉な笑みが顔に浮かぶ。

そのとき二宮くんが、紙袋を私の前に差し出した。

これは・・・。

「茉莉さんの香り。土曜日、必死こいて探してたとき、中学のクラスメイトに偶然会ってさ。そいつに手伝ってもらってやっと見つけた。たぶんこれであってると思う」

じゃああの時見た可愛い女性って、二宮くんのクラスメイトか。
二宮くん、私が愛用しているコロンの名前も知らないはずなのに、必死に「マシェリ・サボン」を探してくれたことは、嬉しかった。
でも・・・。

頑なに受け取ろうとしない私の手を二宮くんは掴むと、強引に私に袋を持たせた。

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