漆黒の闇に、偽りの華を
聖也さんは、訝しげな顔をこちらに向ける。
「なっ……!つ、付き合ってません!!」
「本当ぉに~?」
「本当っ!!!」
聖也さんに顔を近付けられて、思わず一歩後退りする。
「聖也。からかうのはやめろ。うちの情報ならとっくにそっちに行ってるだろ?茉弘の事だって、お前ならよく知ってるはずだ。」
恭があたしと聖也さんの間に割って入る。
「はいはい。すみませんね。そんなに睨まないでよ。
そうね。その子の事ならよく知ってるわよ。」
聖也さんは意味ありげな笑みをあたしに向ける。
ドクンと心臓が跳ねる。
この人、やっぱり全部知ってるんだ。
直感だけど、そう思った。
あたしがここに居る理由。
あたしが鷹牙のスパイだって事。
大切な弟の為に、いつか恭達を裏切る事。
全部、知っている。
「茉弘?どうしました?顔色が悪い。」
恭があたしの頬に手を置く。
その温もりと、恭に触れられているという緊張ですぐに我に返る。
「だ、大丈夫!何でもないから!」
「でも、顔色が……」
恭が更に顔を近付けてくる。
「ちょっ!恭近いっ!」
「あれ?今度は赤くなりましたよ?」
「う、うるさいっ!離れてっ!!変態っ!!」
恭の顔をグイグイ押し戻していると、冷たい声が空気を切り裂く。
「イチャついてんじゃないわよ。あんた達。」