漆黒の闇に、偽りの華を


「恭は……何で姫を取らないの?」


「え?」


恭は、驚いてあたしに向き直る。


「昨日、聖也さんが言ってたから……。」



聞いてもいいのかな?


昨日見た、恭の寂しい顔が浮かぶ。


何となく、触れてはいけないような気がしていたけれど、何か恭について大切な事が隠されている気がするから……。


ううん。


単純に知りたいだけだ。


恭の事を。


「傷付いてほしく……ないから。」


「……え?」


「俺のせいで、誰かが傷付くのとか嫌なんです。」


恭は表情こそ変えない。


だけど、やっぱりどこか寂し気だ。


「何で恭のせいで誰かが傷付くの?」


「茉弘。さっきの柚菜と理さんの話は、ごく一部の成功例なんです。そんなに全部が全部、上手くいっているわけじゃない。
俺は、姫になった子が取り返しのつかない傷を負う例も沢山知っているんです。」


昨日の百合さんの言葉が蘇ってくる。


姫は、暴走族グループの一番の弱味。


そのグループを潰そうもんなら、まず姫が狙われるんだ。


恭の言う"傷"っていうのは、怪我だけの話じゃない。


犯されて負う心の"傷"だってそうなんだ。


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