猫の恩返し
『お前さ、彼女の面倒ぐらいちゃんと見とけって』


「え…」


もしかして…


「居るのか?!」


『うっせ。おま…耳、潰れる』


「あ、悪い…」


つい電話口で叫んでしまった

それでも、溝口の声は楽しそうだ


『前みたいに話は聞かねーけど、うちのトラ箱で預かってっから、サッサと迎えに来いよ』


「サンキュー」


『んじゃ、俺も仕事があるから』


「ああ、じゃあな」


電話を切り、車の鍵を持って急いで家を出る

無事を知って、心の底から安堵した



△▼△▼△▼



「ナツ」


部屋に案内され、ボーッと椅子に座るナツに声を掛ける


「………トー…ゴ」


プイと顔を逸らし、表情が見えなくなった


「まだ………怒ってるのか?」


「………」


「ゴメン…俺が悪かったよ。だから帰ろ、な?」


ナツの前に手を差し出す
< 170 / 215 >

この作品をシェア

pagetop