猫の恩返し
☆別れの時間☆
「本当に…行っていいのか?」


有休を消化し、今日からまた仕事だ


「………ん」


旅行から帰ってきて、急激に症状が悪化したナツ

一夜だけでも体の繋がりが持てて嬉しいと思ったのに、それが原因かもしれないと思うと、あの時の自分の軽薄さを呪った


「───ゴメン」


ナツの頬に手を添える


「トーゴのせいじゃないよ。ずっと…恩返しがしたかったの」


「恩返し?」


「そう…。拾ってもらった恩返し。してもらいっぱなしは…申し訳ないから」


俺の手に自分の手を重ね、優しく微笑んだ


「恩返しとか…そんなのいいから…。早く良くなれよ」


『せいぜい、苦しまないようにさせてやりな』


あの女の言葉が甦(よみがえ)る

鎮痛剤も、もう何度も取りに行っていた
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