猫の恩返し
まだ…

まだ、大丈夫…

頼むから…


「早く良くなって…またどこか行こう。春は桜が綺麗だから」


「うん…。見て………みたいな…」


「『見たい』じゃなくて、『見る』んだよ」


「…そう、だね」


ニコッと微笑むナツから、離れたくない


「ほら、仕事行かなきゃ…。一週間も休ませてもらったんだからさ」


「ああ…」


「仕事いっぱい溜まってるかもね」


「なるべく早く帰ってくるから」


「琴美さんが来てくれるから、大丈夫だよ」


俺の代わりに、事情を知ってる牧野が一週間休んでナツの面倒を見に来てくれることになっていた

それでも後ろ髪を引かれる


「行ってらっしゃい」


「………行ってきます」


無機質な音を立てて閉まる前に玄関を振り返ると、ナツが笑顔で手を振ってくれていた
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