麗雪神話~炎の美青年~
会談は食事もまじえ、和やかに進んでいた。

こうしてトリステアとアル=ラガハテスが歩み寄るのは、何十年かぶりだ。

そう思うと、セレイアは興奮せずにはいられない。

「ゆくゆくは国交を始め、和平条約を結びたいと、我々アル=ハル族は考えています。我々もこの地を、安住の地として定めたいのです。たとえ霧の脅威があったとしても」

ブレイズがそう言い、強い視線で一同を見渡す。

そう、今まで、霧の脅威があるからこそ、アル=ラガハテスの人々は頻繁に住む場所を変えなければならず、そういった不満が巡り巡ってトリステアとの戦争へと発展してきていた。

しかし国使たちはブレイズの言葉に戸惑いを見せた。

霧の脅威をどうにかしてこの地に安住する―それはすなわち、トリステアのように風車をつくることを意味するからだ。けれど風車の技術提供は、見返りがなければ国としてすることができない。

そして今まで、その見返りがなかった。

「ブレイズ殿、しかし我々としては風車の技術をお教えすることは………」

言いにくそうに白髪交じりの国使の一人が皆の声を言葉にする。

するとなぜか、ブレイズが頷いた。

そう、強い視線のままで。

「そうですね。今までのまま、何も見返りを差し出せなければ、風車の技術をいただくことはできないでしょう。
けれど、それに見合った見返りがあれば、それも可能なのですよね?」

思わぬ話の展開に、国使たちがさらなる戸惑いを見せる。

「ええ、もしも、見合った見返りがあるのであれば……」

「…わかりました。
これをご覧ください」
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