麗雪神話~炎の美青年~
ムカデとは思えない機敏な動きで、ムカデは高速にうにょうにょと体をくねらせて突進し、セレイアを踏みつぶそうとする。

セレイアがそれを跳んでかわすと、背後から何かが空を切って飛んでくる音がした。

咄嗟に体を捻ってそれをかわしたのは、鍛え上げられた戦士の勘というべきか。

首だけを動かして飛んで行った先を見ると、セレイアをかすめたのは、先端のとがった針のようなものだとわかった。

そしてその針は、ムカデが発射したようだということも。

「ディセル! このムカデ、針を発射してくるみたい! 気を付けて!」

「わかった! セレイアも気を付けて!」

続けざまに、ムカデは針を発射した。

どうやら脚の先端に針を発射する器官がついているらしい。

しかも、一本発射すると、すぐに再生し、新しい針が生まれるらしい。

複数同時に発射されたため、セレイアはうまくかわせずよろけた。

刺される……!!

セレイアは思わず息を詰めたが、痛みは襲ってこなかった。

目の前に透明に輝く壁ができ、そこに針が突き立ったことに、遅ればせながら気が付く。

氷の盾だ。

―ディセル。

「ありがとうディセル! 助かったわ!」

「まだ気は抜けないよ! はっ!」
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