麗雪神話~炎の美青年~
一方、先頭を行くディセルは口数が少なかった。

怯えているという様子ではない。

具合が悪いようだ。

雪の神である彼にとっては、この熱気がこたえるのかも知れない。

彼の体調を思うと、さっさと用事を済ませて帰らねばとセレイアは思う。

しばらく歩くと、開けた場所に出た。

細い足場を残し、あとはぽっかりと空間が開けている。

おかげでこの洞窟が深く、何階層にも広がっているのが見て取れた。

(この洞窟、想像以上に大きいわ)

どこまで行けば、首飾りを盗んだという吟遊詩人に会えるのだろう。

今はひたすら奥を目指してみるしかないと思う。

だが奥へ行けばいくほど危険は増す。

先に入っていった次期族長たちは大丈夫だろうか…。

セレイアが思いを巡らせていると、唐突に竪琴の音色が耳に飛び込んできた。

―この音色は…!

かなり近い。

「セレイア!」

「…わかってる!」
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