麗雪神話~炎の美青年~
セレイアが槍を構えようとすると、なぜかブレイズがそれを制した。

「お前たち二人は、ここで待ってろ。俺が行ってくる」

「え!?」

「あいつが用があるのは、俺なんだよ。ま、近づこうとしたところで、近づけないだろうけどな。じゃ、ちょっくら行ってくるから。…ああ、かったりぃな」

そんな説明で、納得できるはずがない。

先程マグマに突き落とされたのは、どこの誰だというのだ。

すたすたと歩いて行くブレイズのあとを、セレイアとディセルの二人は当然ついていこうとした。

――しかし。

ふたりは同時に、何か壁のようなものに鼻っ柱を打ちつけた。

「いたっ」

「なんだこれ。進めない…見えない、壁?」

ディセルの表現が適切な気がする。

二人は目に見えない、壁のようなものに阻まれてしまったのだ。

セレイアは焦って、どんどんと見えない壁を叩いた。

「待って! ブレイズさん待って! 一人でなんて危険よ!」

「ブレイズさん!!」

聞こえているはずなのに、ブレイズはなんの反応も示さなかった。

いや、聞こえていないのかもしれない。

この見えない壁が音を遮断している可能性も大いにあり得た。
< 83 / 176 >

この作品をシェア

pagetop