SONG 〜失われた記憶〜
私が深く関係しているらしいが、
その時の記憶が私には全くない。

所謂、
記憶喪失ってやつだ。

一部分だけの。


生活には支障がないのでとくに問題ない。

無理に思い出そうとすると、
頭がズキズキ痛むし、
この話題は皆、
悲しい表情をする。

愛する人たちのそんな顔は見たくない。

だからこの話は禁句だ。

心の中にそっとしまい込んでおく。


きっと思い出してはいけないのだと思う。

この平和な日常を壊したくはない。

「新曲出来たらまた、
ハルんとこ聴かせに行くんでしょ?」
「もちろん。
その為に作ってるんだもん」

有名になりたい、
自分たちの歌を世界に広めたい、
そんな安易な考えでBAZZを結成したわけではない。


ハル兄が好きだと言ってくれた、
私たちの歌を彼の耳に沢山届けたい。

そんな純粋な気持ちからBAZZは始まった。

「あのさ、
俺も一緒に行っちゃ駄目?」
「へ?」
「最近アイツに会ってないからさ。
流石に仕事帰りに寄るのも気が引けるし」
「ありがとう義人さん。
ハル兄、
きっと喜びます」

こうして時折、
ハル兄に会ってくれる彼には感謝している。

殆どの人たちはもうハル兄のことなど、
忘れてしまっているのだろう。


天才とまで言われたピアニスト、
箕山春人の存在など……。


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