SONG 〜失われた記憶〜
その後私たちは、
お酒を酌み交わしながらの晩餐会を楽しんだ。

もちろん私の手にはお酒ではなく、
レモンみずが注がれたぐらいがしっかり握られている。

「あれ?
ねえ、
詩。
ルイは?
見当たらないけど」
「……え?」

綾那に言われ、
辺りを見渡してみる。

だが、
ルイの姿はどこにも見当たらない。

またどこかで寝ているのだとは思うのだが、
たまに外で寝てたりすることもあるから心配だ。


風邪でも引かれちゃ困る。

「ねえ、
空。
ルイは?」
「あん?
……知らね。
お守り役はお前だろ」
「人をベビーシッターみたいに言わないでよ。
好きでやってるんじゃないんだから」

私の隣に腰を下ろしている空は、
ウイスキーグラスを片手に窓から見える景色をぼんやりと眺めていた。

その姿は儚げで、
物思いに耽っている様子。



長年連れ添ってきたが、
そんな姿は初めて見る。

まるで知らない男の人みたいだ。

「詩?
どうしたの?」
「あっ……なんでもない。
ルイ捜してくるね」

私はなんだか怖くなって、
逃げるようにその場を立ち去った。



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