SONG 〜失われた記憶〜
「圭一さん、
ルイ知らない?」
「あん?
……ああ、
アイツなら奥で寝てるぜ」

と、
圭一さんはカウンター奥にある扉を目配せして言った。

「そう。
ありがとう」

私は一応確認の為、
ルイがいるらしいカウンター奥の部屋を覗いてみる。

そこにルイはいた。




決して綺麗とは言い難く、
煙草の匂いが染み付いているその一室で気持ち良さそうに眠っている姿は、
まるで天使のよう。

不覚にも思わず見惚れてしまっていた。



どうでもいいが、
よくこんな煙草臭い部屋で眠れるものだ。

私には理解不能。






風邪を引いてしまうといけないので、
近くにあったブランケットをその大きな身体にそっと掛けてあげる。

こんなことをしていると、
ルイの母親にでもなった気分だ。

自然と表情も和らぐ。

「ルイ、
いた?」
「うん。
奥でぐっすり寝てた」

綾那の元へ戻ると空はいなく、
学生時代の友人と談笑していた。


先ほどの儚げな表情は消え失せ、
いつもの私の知っている空に戻っている。

「ふふ、
相変わらずだね」
「うん。
本当昔から成長してない」

人は成長するにつれ、
少なからず変わってゆくもの。


しかしルイは、
BAZZ結成当初から何も変わっていない。

あの頃の純粋な心のまま。



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