……っぽい。
「俺を呼び出したときに泣いてた理由、あれを見たからだったんですね。家はあるけど帰れないって言ってた理由も……納得しました」
2人とも無言でマンションを出たとき、足を止めた笠松が静かに言った。
その声で顔を笠松に向けると、マンション前の植え込みにはめ込まれた外灯の明かりが、まだ若干、スーツに着られている感の残る笠松の姿をぼんやりと照らしていた。
薄ぼんやりとしている中でも分かる。
笠松の両手は体の脇で血が止まるほどに堅く握りしめられていて、顔は、今までに見たことのないほど怒りに満ち満ちている。
私は、そんなお人好しの笠松に『落ち着け』とたしなめるために言葉を絞り出す。
先輩らしく、できるだけ普通の口調を意識するのも、もちろん忘れない。
「でも、私も私なんだよ。今思えば、あれ?っていうのがたくさんあったんだ。化粧品の配置がちょっと違ってたり、シャンプーの減りが早かったり……。気づかなかったんじゃなくて、気づこうとしてなかったのかも。だから彼氏だって、堂々と浮気ができたんだと思う」
「いや、絶対に彼氏が悪いですって!だっておかしいでしょ⁉ どうして彼女の先輩の部屋をホテル代わりに使えるんですかっ!……ちょっと今からぶっ飛ばしてきます‼」