……っぽい。
笠松の頭が必死に状況を理解しようとしているのが、ありありと伝わってくる。
彼氏と、彼女である私以外の女の人の靴が玄関にある--それが何を示しているのか頭をフル回転させ、その混乱の中であっても、私に対しての気遣いを見せようとしてくれているのだ。
“先輩の靴でないなら”、“確か彼氏が”……そういう優しさを含んだ言い回しが、笠松らしいといえば笠松らしいけれど、それも今は、私の傷をグリグリとえぐるだけだ。
「やっぱりそっか。……もういいよ、笠松。妙なことにつき合わせてごめんね。もっかい鍵かけて、ここから離れよう」
「先輩、でも……」
「修羅場突入とか、笑えないよ。彼氏の浮気相手とバトれるほど体力残ってないもん」
「……、……はい」
私が畳みかけるように言うと、笠松は苦い顔で再び鍵穴に鍵を差し込み、施錠されたことを確かめるため、もう一度ノブを回した。
私以外にこの部屋の鍵を持っているのは、彼の相田真人だけ--つき合って3年の、そろそろ本気で結婚を考えていた相手だけだった。
でも、あんなにドギツい浮気ができるのだから結婚を考えていたのは私だけだったらしい。
白昼堂々、彼女の部屋に浮気相手を招き入れて体を重ねるなんて、人の考えることだろうか。