……っぽい。
 
「ごめん、先輩……海月。俺、守れなかった」


カグに手筈してもらったビジネスホテルで先輩が安心しきった寝息を立てる中、そのうなじに顔をうずめ、今だけだからと自分に言い訳をしがら、涙で掠れた声で少し弱音を吐いた。

くすぐったかったのか、モゾモゾと身じろぎをする先輩に申し訳なさが先立つキスを瞼に落とし、今度は何があっても絶対に守ると心に誓う。


どんなことからだって、絶対に、俺が。

先輩を守る。


幸いにして察しのいいカグによってすぐにベッドが新調され、先輩と俺は事なきを得たわけだが、過呼吸後も先輩は、相も変わらず珍獣だったのが、とても残念でならなかった。

こっちは死ぬほど心配したし後悔も自己嫌悪もしたというのに、当の本人はあっけらかんとしていて、先輩らしくもあり、やはりその危なっかしさから目が離せない日々か続いている。


千晶のことを話せば勝手に知恵熱を出すし、どんだけ男が喜ぶセックスしかしてこなかったんだと泣きたくなるほど、先輩の体は自分の気持ちいい部分を知らなかった。

……まあ、それはそれで、次は何をしようか、どう感じさせてあげようかと楽しみになり、同時に仕込み甲斐もあるというものだけれど。
 
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