……っぽい。
 
「ありがとね」


自然とそう、唇が声の形を作る。

うまく笑えているか自信がないけれど、こんな夜に1人にしないでいてくれる笠松に感謝の気持ちを込め、精一杯に笑顔も作った。

この笑顔を取り戻してくれたのは笠松だ。

まだぎこちないかもしれないし、笠松の目には笑っているように見えないかもしれない。

けれど、それが今の私なのだから仕方がない。

すると笠松の表情が急に和らいだ。


「先輩、やっと少し、自然に笑いましたね」

「え?」

「ずっと今にも死にそうな顔だったから、正直なところ、泊めてくれる友達が見つかっても行かせていいものかどうか、って感じでした」

「笠松……」


あんた、いい後輩じゃないの。

今度は胸の奥がじーんと温かくなって、優しい子に育ってくれてママ嬉しい……なんていう、ある種の親心のようなものが湧いてくる。

彼氏に浮気をされて後輩に泣きついた格好悪い先輩だけれど、それでもそんな私を尊敬していると言ってくれる笠松は、まるで神様だ。


「ていうか、俺のほうこそ、ウォッカだの飲もうだのってガンガン誘ってすみませんでした。実はこれ、ただのポカリです」

「はい!?」

「先輩のことを笑わせたかっただけなんですけどね。へへ」
 

 
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