……っぽい。
 
「ひゃ……笠松……!?」

「ごめん、今すぐ抱かせて」


突然私の両手首を強く握り、壁に押し付けたかと思ったら、どうしたのと問う隙すら与えてもらえず、笠松に乱暴に舌をねじ込まれた。

私たちが動いた弾みでシャワーホースがバチンと跳ねて堅い音がバスルームに反響し、シャワーヘッドから勢いよく出ているお湯が笠松の背中を打ち、飛沫が私にも容赦なくかかる。

しかし、容赦がないのは笠松のほうが上だ。


何度も何度も角度を変えては口内に深くねじ込まれる舌は、逃げても逃げても追ってきて、すぐに息が続かなくなり、すでに酸欠気味。

密閉されたバスルームは温度も湿度もあっという間に上がり、むせ返るほどの霧状の空気の中、笠松の背中越しから跳ねてくるシャワーのお湯が私の顔にもかかるという状況では、鼻から呼吸をすることもままならない。

手首を握られているので押し返すこともできなければ、呼吸のために口を開いてもすぐに塞がれ、逃げれば追われ、自分では精一杯抵抗しているはずが、全く歯が立たなかった。

どうしたのという困惑が、笠松の乱暴な舌を必死で受け止める私の胸に静かに積もっていくだけで、思考能力が低下していく。
 
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